第一次大戦の戦後賠償として日本に現物で支払われたもののうち,東京帝国大学図書館に委託された書籍群についての初期的調査報告.
そもそも第一次大戦後のドイツに課せられた賠償金は金貨によって支払われたというイメージが強かったので,現物支払いが認められていた事実をここで初めて知った.東大の要求に続いて東北,九州,北海道,京城,台北など他の帝国大学からも要求があったとのことだが,そのようなコレクションの存在を在学時に聞いたことはなかった.アンテナが低かったという可能性もあるが,そもそも東大ですら埋没している状況では,他の大学でもほとんど存在感がなかったのではないか.
とはいえ,こうして導入された独国賠償金図書は,1923年の関東大震災で壊滅した東京帝大付属図書館の復興に大きく貢献した(東京帝大附属図書館の被害の詳細は関東大震災と東京帝国大学附属図書館を見よ).2万冊に及ぶという賠償金図書に関する今後の調査の進展に期待.
そういえば,理薬図書館から除籍になって譲り受けた物理学書の中に,100年くらい前のラザフォードの著書があったので,もしかしたら,と思って確認したが,そもそもラザフォードは英国人だし,ケンブリッジ大学出版局刊行の英文図書だしと全く違った.あほである.